残酷度 | グロテスク度 | ストーリー | トラウマ度 |
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★★★★ | ★★★★ | ★★★★ | ★★★★ |
直視できない残酷カニバルホラー。
壮絶なグロテスク映画として知られるホラー映画『グリーンインフェルノ』。独創的なホラー映画を手掛ける異才イーライロスがメガホンを執り、2013年に公開されました。
『グリーンインフェルノ』は残酷なカニバルムービーである一方、奇抜な設定やサスペンス要素なども織り交ぜている見応え抜群のホラー映画です。
この記事では、そんな『グリーンインフェルノ』の考察、見所とネタバレ感想、下痢や結末などの謎が残るシーンについて解説しています。
血生臭くトラウマ必須の『グリーンインフェルノ』で、是非ともエキサイティングして下さい。
ホラー映画『グリーンインフェルノ』作品情報
原題:The Green Inferno
製作国:アメリカ
公開:2013年
収録時間:100分
<メインスタッフ>
監督:イーライ・ロス
脚本:イーライ・ロス/ギジェルモ・アモエド
原案:イーライ・ロス
製作:イーライ・ロス/他
製作総指揮:ジェイソン・ブラム
<メインキャスト>
ジャスティン:ロレンツァ・イッツォ
アレハンドロ :アリエル・レヴィ
ラース:ダリル・サバラ
ダニエル :ニコラス・マルティネス
エイミー:カービー・ブリス・ブラントン
サマンサ:マグダ・アパノヴィッチ
ジョナ:アーロン・バーンズ
カーラ:イグナシア・アラマンド
ケイシー:スカイ・フェレイラ
ホラー映画『グリーンインフェルノ』あらすじ
過激な慈善活動を行う学生グループは、企業の森林伐採により危機に瀕しているヤハ族を救おうとペルーのジャングルへ乗り込む。だが、彼らの乗った飛行機は熱帯雨林に墜落。生き残った学生たちは助けを求めるが、そこで出会ったヤハ族は食人族だった…。
転載:U-NEXT/グリーンインフェルノ
ホラー映画『グリーンインフェルノ』見所ポイント
実力派スタッフが放つ本格カニバルホラー
『グリーンインフェルノ』は、ホラー映画にありがちな安っぽい低予算映画ではありません。
数多くのホラー映画製作に携わる敏腕プロデューサー、ジェイソン・ブラムによるプロデュースで、投入した製作費はなんと約5億円。『ホステル』や『キャビン・フィーバー』などで知られる奇才イーライ・ロスを監督に迎え、アメリカ・チリを代表する女優でモデルのロレンツァ・イッツォを主演に抜擢。世界的なスタッフ、キャストたちにより製作されています。
監督を託されたイーライ・ロスは、『食人族』や『人喰族』など、1980年代に世界で一大ムーブメントを巻き起こしたイタリアホラー映画をモチーフに、独自のカニバルムービーを創り上げました。その衝撃的すぎる内容に、ホラーの大御所スティーブン・キングが大絶賛したというエピソードも。
先住民や植民地支配問題をテーマにしていることから、一部の社会組織や評論家から批判的な意見が飛び交うなど、物議を醸した作品でもあります。
ストーリー性が高い
グロテスク映画の目的は、激しい残酷描写で観客の肝を抜かせること。設定やストーリー性は重視されず、支離滅裂な映画も多くあります。しかし、『グリーンインフェルノ』は、残酷描写が連続するだけの単純なホラー映画ではありません。壮絶なグロテスク映画でありながら、息を飲み込む高いストーリー性を保持しています。
物語の後半はグロテスクな描写が際立ちますが、ヤハ族が登場するまでの前半は、社会派サスペンス映画さながらのストーリーが展開。先住民族の習慣や伝統、根深い社会的な問題にも切り込んだ内容で、ホラー映画的な要素は一切描かれません。その興味深い会話や設定に好奇心を刺激され、『食人族』であることを忘れてしまうほど。高い緊張感と期待感を抱く、見応え抜群のストーリーです。
中盤以降は、ヤハ族による恐怖の物語へと大きく転換。前半とは異質のスリルに満ち溢れた『食人族』の世界が全開します。それでも、ストーリー構成に捻じれがないので、違和感を覚えたり矛盾を感じたりしません。伏線をしっかり回収しつつも、いくつかの謎を残して終幕するなど、既定のカニバルホラーとは一線を画しています。
残酷極まるグロテスク描写
『グリーンインフェルノ』はグロテスク描写が満載です。物語の前半は、人間ドラマが展開されていきますが、中盤以降は圧倒的なカニバルスプラッターとなります。
生きた人間の目玉をえぐり取って生食、頭部と手足を切断して胴体を解体、腹部を引きちぎり内臓をむさぼり喰う、家畜のように人肉を調理するなど、残酷シーンの連続。そのひとつひとつが強烈で、見るに耐えない描写です。恐らく、グロの耐久性が低い人は正視できないでしょう。「ヤバい映画」と言われている所以でもあり、頷けます。
『グリーンインフェルノ』のグロテスク度は、あまたあるスプラッター映画の中でもトップレベルです。
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実際の現地住民をヤハ族に起用
『グリーンインフェルノ』は、赤肌で独立した言語を話すヤハ族がとても印象深く残ります。このヤハ族を演じたのは、実際にアマゾンに暮らしている村人たちです。ちなみに、片目の統領はアントニエータ・パリ、黒肌で黄色い顔の旗頭はレイモーン・ラオという俳優さんが演じています。
イーライロス監督はオリジナルティ溢れる映画を作りたいという思いから、現地に住む村人に協力を依頼。映画の内容を承諾した村人たちは、肌を赤く塗ったり血糊や特殊メイクを施したりと、快く撮影に望んだようです。
部族としての仕草や日常の風景など、まるでドキュメンタリーを観ているかのようにリアルで、自然体の部族そのもの。イーライロス監督は「食人部族」を巧みに再現し、独自のカニバルムービーを創り上げたのです。
ホラー映画『グリーンインフェルノ』考察・ネタバレ解説・感想
『グリーンインフェルノ』には、いくつかの謎が残されていますが、その中でも代表的なシーンや結末について考察、解説します。
エイミーの下痢シーン
ヤハ族に捕らえられたエイミーが、檻の中で下痢をしてしまいます。仲間に謝りながら脱糞するエイミー、その姿を失笑するヤハ族たち。グリーンインフェルノの不可解な場面のひとつです。
この下痢のシーンは、エイミーの精神状態を表現しています。
エイミーは精神に不安があり、ストレス耐久が乏しい人間です。それは、抗不安薬を服用する姿などで示されています。
「目前で仲間が喰い殺され、次は自分かも知れない、いつ殺されるかわからない。」ヤハ族の恐怖に怯えるエイミーは、極度の不安と緊張を抱えていました。そのストレスからお腹をくだし、我慢できずに脱糞したと考えられます。
強いストレスを受けると、自律神経の乱れからお腹を壊す人もいます。(まさに私ですが。笑)ストレスに弱いエイミーでは尚更のことであり、あの状況下で下痢になるのは自然な生理現象といえるでしょう。
下痢のシーンを採用した理由
エイミーが下痢になったのは理解できます。疑問が残るは、精神状態を表現するのに下痢のシーンを使う必要があったのか、ということ。追い詰められた精神状態を描く方法は、下痢じゃなくとも他にもあったはずです。
下痢のシーンを使ったのは、イーライロス監督が『グリーンインフェルノ』に違和感のない生々しさを求めていたからです。そんな映画にしたかったと映画祭で語っていますし、そのようなシーンはエイミーに限らず他のキャラクターでも見られます。
ヤハ族に囲われ、理性を保つのが精一杯の状況の中で、その耐え難いストレスを「サイコ野郎」のアレハンドロは自慰行為で処理、穏便なダニエルは暴力で発散、精神に不安を抱えるエイミーは便意を我慢できずに脱糞。
このように、映画にリアリティをもたらすために、キャラクターの個性を用いて各々の精神状態を表現したという解釈です。
食人族による恐怖だけではなく、人間くさい生々しい側面を描いているのも、『グリーンインフェルノ』の見所のひとつとなっています。
逃げた女の行方は
ヤハ族に捕まり檻に閉じ込められた学生たち。その中のひとりであるサマンサが、ヤハ族の監視の隙をついて檻から脱出します。巷で言われている、逃げた女ですね。
海岸へ向かって全力疾走し、岸に止めてあるボートに滑り込んだサマンサ。脱出成功かと思いきや、そこで画面が暗転して次の場面へと切り替わるので、サマンサの動向がわからなくなってしまいます。
果たして、サマンサは一体どうなったのか。
残念ながら、サマンサは食人族の餌食となりましたね。
サマンサが殺される直接的な描写はありませんが、その後に食人族が学生らに食事を出すシーンで判明します。
食人族が出した食事は、サマンサの肉片でした。皿の中にある肉に、サマンサのタトゥーが刻まれていたのです。それに気付いたサマンサの恋人エイミーは、皿を割り首を切って自害します。食人族の子供らが、剥ぎ取ったサマンサのタトゥーが入った皮膚を、自分の身体に貼り付けて遊ぶシーンも描かれています。
それらの描写から、サマンサは喰われたのだと解釈できます。
結末・ジャスティンが嘘をついた理由
奇跡的に生き残ったジャスティンは、無事に母国へ帰省します。落ち着きを取り戻した頃、父親らにアマゾンでの経緯を話すのですが、食人族の存在や仲間が喰われた事実を隠し、全員飛行機墜落で死んだと嘘をつきました。
壮絶な恐怖を体験したにも関わらず、ジャスティンはなぜ嘘をついたのでしょうか。
自分を助けてくれた食人族の少年を守りたかったのか、食人族に関わりたくなかったのかなど、さまざまな解釈がありますが、嘘をついた理由は、保身のためです。
アマゾン脱出する際、ジャスティンはアレハンドロを助けずに置き去りにしました。父親らに事実を話すと、アレハンドロが救出されることになり、置き去りにしたのがバレてしまいます。それを避けるため、ジャスティンは架空の出来事を作り上げ、自身の行為を闇に葬ろうとしたのです。
「アレハンドロは生きていた」という結末が、その根拠になります。ジャスティンは、生き延びたアレハンドロを飲み込もうとする悪夢も見ていますし、ジャスティンにとってアレハンドロの生還は極めて不都合なのです。
その他の解釈
食人族の行為に関心がなかったという考えもできますが、それだと根拠が伴いません。
ジャスティンは、苦痛を伴う割礼など、先住民の習慣や伝統儀式や強く非難していました。高慢なエスノセントリズム(自文化中心主義)であり、人権意識の高い人間。そんなジャスティンが、食人族への関心を持たなかったとは、考え難いです。
逃してくれた少年を守りたかった説も違います。ジャスティンは、脱出のために少年を利用したに過ぎません。
味方にしようと、監禁された当初から少年の注意を引いていましたし、脱出後も命の恩人ではある少年にお礼の一言もありません。少年に感情移入している姿はなく、ジャスティンにとっては上手く利用できたという程度なのでしょう。
その他にも、先住民の救世主という名声を得るため、アレハンドロの独善的なイズムを受け継いだといった理由も考えましたが、どれも府に落ちませんでした。
イーライロス監督は『グリーンインフェルノ』を、「ネットの情報に感化され、社会派のインテリだと勘違いした人間を風刺した作品」だと評しています。それに当てはめれば、主人公がアンチヒーローとして完結するのが妥当でしょう。
ホラー映画『グリーンインフェルノ』総括
衝撃的なグロテスク描写、高いストーリー性、賛否巻き起こる結末など、グリーンインフェルノは見どころ満載。評論家からの評価はイマイチでしたが、個人が鑑賞する分には十分楽しめるホラー映画です。
スティーブンキング信者の私にとっては「あのキングも大絶賛!」というだけで面白い映画になりますが。笑
ただ、グロテスク描写が苦手な人が鑑賞するには、覚悟が必要かも知れません。それくらい、残酷です。不可解なシーンなどは、自分なりの解釈をしながら観るといいですね。
是非一度、ご鑑賞あれ。
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