映画『キャリー(リメイク版)』オリジナル版との違いを徹底解説!

考察・感想・ネタバレ
トラウマ度 ストーリー 血しぶき 恐怖度
★★★ ★★★ ★★★ ★★★

スティーブンキング原作による傑作ホラー映画『キャリー(1976年)』のリメイク版。2013年にアメリカで公開されました。

往年の名作ホラー映画のリメイク、キャリー役をクロエ・グレース・モレッツが演じているなど、注目を集めた話題作。『キャリー(リメイク版)』は高い人気を誇っている、近代ホラー映画を代表する作品です。

そんな『キャリー(リメイク版)』ですが、オリジナル版と何がどう違うのかと比較されることもしばしば。

そこで、今回は映画『キャリー』双方の違いを徹底解説。リメイク版(2013)とオリジナル版(1976)の違いを炙り出し、詳しく解説しています。

どちらが面白いのか、ネタバレありの感想も。構成やあらすじ、スタッフ、キャストなど、比較しながら双方の魅力を深掘りしていきます。

違いを知り『キャリー(リメイク版)』を多角的に見ることで、映画がより面白くなりますよ。隠された違いに、きっとエキサイティングするでしょう。

ホラー映画『キャリー(リメイク版)』作品情報

キャリーリメイク版DVDのジャケット画像
©Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.

原題:Carrie
製作国:アメリカ
公開:2013年
上映時間:99分

<スタッフ>
監督:キンバリー・ピアース
原作:スティーヴン・キング
脚本:ロバート・アギーレ=サカサ
製作:ケヴィン・ミッシャー
音楽:マルコ・ベルトラミ
撮影:スティーヴ・イェドリン

<キャスト>
キャリー・ホワイト:クロエ・グレース・モレッツ
マーガレット・ホワイト:ジュリアン・ムーア
リタ・デジャルダン:ジュディ・グリア
スーザン・スネル:ガブリエラ・ワイルド
クリス・ハーゲンセン:ポーシャ・ダブルデイ
トミー・ロス:アンセル・エルゴート
ビリー・ノーラン:アレックス・ラッセル
ヘンリー・モートン:バリー・シャバカ・ヘンリー


リメイク版の監督は、アカデミー賞作品『ボーイズ・ドント・クライ』をはじめ、数多くの映画賞獲得の実績を持つキンバリー・ピアース。女性監督です。

主演にクロエ・グレース・モレッツを迎え、ジュリアン・ムーアやジュディ・グリアなど、ハリウッドのトップスターらの共演も大きな話題となりました。

ホラー映画『キャリー(リメイク版)』あらすじ

熱狂的信仰者の母親に育てられたサイキック少女キャリー。学校で受けたいじめが原因で、母親と確執が深まることに。母親の反対を押し切りプロムパーティーに参加したキャリーであったが、クラスメイトの嫌がらせにより醜態を晒されてしまう。怒りに満ちたキャリーは覚醒し、サイコキネシスを爆発させる。周囲は焼き尽くされ、地獄と化すのだった…。

ホラー映画『キャリー(リメイク版)』評価

名作のリメイクであることも災いし、作品の評価が今ひとつ伸び悩みました。とりわけ、識者の間からは批判的な意見が多く寄せられていますね。

しかしながら、偉い先生方が辛口評価だからいって、駄作であるとは限りません。評論家と一般ユーザーの観点は異なりますし、映画は観る人がどう感じるかが大切だからです。

実際に、私自身もオリジナル版とリメイク版の双方を何度も鑑賞していますが、どちらにも魅力があり、どちらも面白い映画だと感じています。

ホラー映画『キャリー(リメイク版)』概要

現代風キャリー
© Matt Sayles/Invision/AP

一言で表せば、『現代版キャリー』。
2013年公開作品ということもあり、映像が鮮明で近代的なホラー映画という印象を受けます。

本編は、オリジナル版を忠実に再現しながらも、現代風アレンジ、サイコキネシス演出、結末の変更など、オリジナル版にはなかった要素がいくつか加えられています。

これは、リメイク版は原作に寄せているため。原作を完全に再現しているわけではありませんが、映画『キャリー』として見応え満載の作品に仕上がっています。

オリジナル版の公開は1976年。オールド映画で画質や撮影手法などによき古さがあり、古典的なホラー映画ですね。

エンターテイメントホラー

監督とキャスト
(Photo by Matt Sayles/Invision/AP)

『キャリー(リメイク版)』 では、ハリウッドを代表するビッグネームの起用も注目を集めました。

当時16歳だった「クロエ・グレース・モレッツ」をキャリー役に抜擢、「ジュリアン・ムーア」が母親役を演じているなど、意外性やインパクトが抜群です。

このようなキャスティングや撮影手法などが相まって、生粋のホラー映画というよりはエンターテイメント性が高い万人向けホラー映画になっています。

至高の原作x最高のキャスト」で、未見時の期待感は最高値でしょう。
実際に『キャリー(リメイク版)』は前評判だけではなく、10億円近い興行収入を獲得しています。

ホラー映画『キャリー(リメイク版)』オリジナル版との違い

ここから、私見と比較を交えながら、オリジナル版とリメイク版の違いを解説していきます。

また、オリジナル版についてはこちらで詳しく解説しています。未見の方は参考にしてみてください。

ストーリーの違い

異なる結末

オリジナル版もリメイク版も原作を忠実に再現しているので、ほぼ同じストーリーです。ですが、結末が全く異なります。
(後術しますが、クラスメイトであるスーの設定や言動を変更するなどして、異なる結末にしています。)

結末の違いは、両者の決定的な違いであり、『キャリー』のテーマに係わる極めて重要な要素です。

オリジナル版|結末解説

プロムの惨劇での唯一の生存者スーザン・スネル。
生き延びたものの、過度なショック状態に陥り長い入院生活を余儀なくされた。

そして、『”CARRIE WHITE BURNS IN HELL!”(地獄の業火で焼かれろキャリー)と落書きされたキャリーの墓標に花を添えようとした瞬間、キャリーの腕が墓地から這い出し、スーの手を掴みとる』という呪いのような悪夢にうなされるのだった…。

オリジナル版では、キャリーは恐ろしい魔女的な存在となり、物語は終幕します。恐怖の余韻を残しながら、やり場のない感情に支配されるエンディングです。

このように、オリジナル版のブライアン・デ・パルマ監督は、『キャリー(1976)』を絶対的な恐怖の物語りとして見事に完結。作品は各方面で多大な評価を受け、『キャリー』はホラー映画における地位を不動のものにしました。

リメイク版|結末解説

一方、リメイク版でのキャリーは、サイコキネシスを持つ魔女ではなく、ひとりの人間として最期を迎えます。

キャリーの死後、法廷に立ったスーは「追い込まれると人の心は壊れる」とキャリーへの理解を示し、弁護し始めるのです。

『キャリーは多くの死者と被害をもたらした。しかし、それはキャリーひとりの罪ではない、キャリーを取り巻く人間らにも罪がある。母親による常軌を逸した育生、日常にあった耐えがたい精神的苦痛。キャリーの悲しみと怒りはもはや極限の状態にあり、同じ環境下であったならば、誰もがキャリーになり得るのだと。』

キャリーが悲劇のヒロインとして存在し、悲しみの共感が深まる結末です。
この結末により、キャリーも被害者であったことが確立します。


この結末の違いよって、オリジナル版とリメイク版における『キャリー』のテーマが、全く異質となりました。

俗世を避けて生きる母親に育てられたキャリー。悲痛な人生を歩んでいたものの、母親の宗教観のおかげでキャリーは無垢で汚れない少女に育っていた。だからこそ、人間として最期を迎えられたのではないか。

なんとも皮肉な結末です。

この結末は、複雑に絡み合った親子の絆を表しているように思えます。

オリジナル版の結末は、完全無欠のホラー映画。
リメイク版は、どちらかと言えばラマチック的な結末ですね。

登場人物の違い

キャリー・ホワイト

キャリー・ホワイト
©Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.

『キャリー』の主人公で、サイコキネシスの持ち主。母親からは制圧され学校ではいじめを受けているなど、悲壮な人生を歩んでいます。

「普通の女の子になりたい」と意を決してプロムに参加しますが、『キャリー』を象徴する大惨事を招いてしまいます。

キャリーの性格や言動に違いはありませんが、キャリーの代名詞であるサイコキネシスが大幅にパワーアップしています。
その能力は凄まじく、鑑賞した多くの人が印象深く残るでしょう。


オリジナル版のキャリーは、意思によってサイコキネシスを発動していました。

リメイク版では、意思に加え、手足などの全身にパワーを宿してサイコキネシスを駆使します。
まさに、「ハンドパワー」です。

このサイコキネシスの使い方が格好よく、まるで漫画やゲームに登場する魔法使いのよう。
とりわけ、プロムからが圧巻で、しばらく釘付けとなります。

怒りによって覚醒したキャリーは、ラスボス魔王のような風格を漂よわせ、空中浮遊も披露。キャリーを殺そうと時速100キロ近い猛スピードで向かってくる車を、サイコキネシスで完全ブロック。そのままガソリンスタンドに放り込んで大爆発させ、クリスとビリーを返り討ちに。

プロムで繰り広げられる惨劇は、オリジナル版以上ともいえる、壮絶なシーンです。

このように、リメイク版ではキャリーがサイキック少女であることを、より強調しています。

マーガレット・ホワイト

マーガレットホワイト
©Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.

キャリーの母親で、自己の世界は全てが宗教の元にある熱狂的な信仰者。
マーガレットは、映画『キャリー』における悲劇の元凶でもあり、物語りには絶対的に欠かせない存在です。

オリジナル版『キャリー』の中でも、最も激しく怖い人物と称されていましたが、リメイク版においても異色の存在感が際立っています。

マーガレットの大きな違いは、追加されたオープニングでの出産シーン。

自宅のベッドでひとり、絶叫とともにキャリーを産み落としたマーガレット。我が子の顔を見るやいなや、殺害しようと裁断ハサミを振り下ろした。しかし、キャリーの顔に刃先が刺さる瞬時のところでマーガレットの手は止まり、そのままへその緒を切断。キャリーを手にしたマーガレットは、「試練だ。」とつぶやく。そして、キャリーを育てていくことになる…。

親子の運命をいざなうこのオープニングシーンは、クライマックスの親子喧嘩とリンクします。見逃し厳禁です。

スーザン・スネル

スーザンスネル
©Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.

通称「スー」。
キャリーのクラスメイトで、キャリーをいじめていたひとりです。

キャリーへの嫌がらせを反省し、償おうとします。そして、キャリーを喜ばせようと、恋人のトミー・ロスに協力を依頼しキャリーをプロムに誘いだすことに。しかし、皮肉にもこのスーの行動が、プロムでの惨劇の引き金になってしまうのです。

スーは序盤から中盤までは変わりありません。ですが、プロム以降の設定や言動が大きく違い、リメイク版のテーマを左右する重要なポジションを担っています。

オリジナル版|プロム以降
キャリーの直接的な天誅は免れたスー。しかし、極度のショック状態に陥り、平穏を失ってしまいます。キャリーへのいじめを反省し心入れ替えたスーでしたが、キャリーは許しませんでした。そして、あの伝説のエンディングを迎えます。

リメイク版|プロム以降
リメイク版でも、スーはラストまで登場する生存者です。
オリジナル版との違いは、キャリーに意図的に助けられたこと。リメイク版でのスーは妊娠していたため、キャリーは手を下しませんでした。

その後に続く法廷シーンでは、スーはキャリーの人間性について語り出します。

このように、両者ではスーの立ち位置が大きく違います。
リメイク版においては、キャリーを被害者として成立させるため、スーの存在が必要だったのです。

演出の違い

プロムでサイコキネシスを使うキャリー
©Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.

現代風にアレンジ

有名なシャワー室でのいじめシーンでは、クラスメイトがキャリーの醜態をスマホで撮影。その動画をSNSで公開し、問題を引き起こします。

また、サイコキネシスについて情報収集するキャリーもインターネットを活用するなど、現代的にアレンジされています。

アレンジされているとはいえ、プロムでの豚の血や手製のドレスなど、要所は原作通りです。

随所でCGを駆使

リメイク版でのキャリーは、序盤からサイコキネシスを発揮します。
家具の浮遊や道路粉砕、暴走車の破壊など、あらゆる超常現象をCG映像化。特にクライマックス、プロムでの映像は圧巻です。近代映画ならではの迫力満点の映像に、固唾をのんで見入ってしまうでしょう。

オリジナル版制作当時の1976年は、CG技術の発展途上。
物を動かすには小道具を、建物の崩壊などには大掛かりなセットを使用しています。そこに、ブライアン・デ・パルマ監督の撮影テクニックを組み合わせ、数々の超常現象を巧みに描き出しています。

スタッフ・キャストの違い

監督|キンバリー・ピアース

キンバリー・ピアース監督
©Sony Pictures.

リメイク版の監督は、キンバリー・ピアース。アメリカ出身の女性監督です。
全米最難関校アイビー・リーグのコロンビア大学に通い、英米文学、日本文学、ファインアートの学位を取得するなど、頭脳明晰な秀才。『キャリーリメイク版』においても、その才能を存分に発揮しています。

オリジナル版は、映画界の巨頭ブライアン・デ・パルマ。世界で最も有名な監督のひとりでもあり、独特の世界観でカルト的な支持を得ています。
映画『キャリー(1967)』でも、分割画面やカメラの360度旋回をはじめ、独自テクニックの「デ・パルマカット」をふんだんに投入し、多くの鑑賞者を魅了しました。

キンバリー・ピアースはエリートで優秀な女性監督。それは作品にも反映されていて、『キャリー(リメイク版)』は知的な雰囲気を醸し出しています。まとまり感も抜群で、無駄のないコンパクトな仕上がり。線が細くてシャープな、洗練された映画です。

そのせいか、ホラー映画としてはいくぶん迫力に欠ける印象を受けてしまいます。インパクトが薄いといば心なしネガティブに聞こえますが、そうではなく、それも『キャリー(リメイク版)』の魅力なのです。

オリジナル版は、 ブライアン・デ・パルマ監督が「とことん行くぞー!」という具合にオラオラと攻め立ててきます。大木が走る激流です。(笑)
それに対してリメイク版は、静かな流れの中にも激しさが入り混じったような、どこか文学的な臭いがします。ギラギラしたおじ様方が手掛けたホラー映画ではないので、とても観やすいです。

ホラー免疫弱者、カップル鑑賞、ファミリー映画には最高のホラー映画でしょう。

キャスト

「映画キャリーの違い」を語る上で、キャストの違いは欠かせません。
その中でも、キャリー役とマーガレット役を演じたふたりのキャストについて、解説します。

キャリー役|クロエ・グレース・モレッツ
クロエグレースモレッツ

オリジナル版でキャリーを演じたのは、名優「シシー・スペイセク」。

圧倒的な演技力で、『キャリー(1976)』を観る人を凍り付かせました。シシー・スペイセクの演技は、オリジナル版の最大の見所と言っても過言ではありません。

一方のリメイク版では、若手人気女優「クロエ・グレース・モレッツ」がキャリー役に抜擢。当時16歳でした。
幼少期から女優として活躍していた彼女は、『キャリー(リメイク版)』でも高い演技力を披露。SF映画やホラー映画が表彰されるサターン賞では若手俳優賞を受賞しました。その演技は、見応え抜擢です。

実はクロエ・グレース・モレッツは、『キャリー(リメイク版)』がホラー初作品ではなく、子役時代から多くのホラー映画に出演しています。殿堂ホラー映画『悪魔の棲む家』や、多大な功績を残した『モールス』など、いずれもホラー映画を代表する作品です。

話を戻しますが、クロエ・グレース・モレッツの演技も確かに素晴らしく、魅力的です。ただ、素晴らしいのですが、悲壮感漂うキャリー役にはミスマッチなのかも知れません。

批判的な意見ではなく、クロエ・グレース・モレッツが可愛すぎるがゆえ、すっぴん風メイクであっても華やかに映るからです。深く悲痛な人生を送っているようには、とても見えないのですね。

とは言っても、当時の彼女はまだ十代半ば。
演技に年齢は関係ないにしろ、27歳で脂の乗ったシシー・スペイセクと比較するのは、いささか酷な気もします。

マーガレット役|ジュリアン・ムーア
ジュリアンムーア

オリジナル版でマーガレット役を務めたのは、技巧派女優「パイパー・ローリー」。

異様極まるカルト的なキャラクターを見事に演じ切り、強烈なインパクトを残しました。
パイパー・ローリーの怪演が、『キャリー(1976)』を傑作へと押し上げたのは言うまでもありません。圧巻でした。

しかし、リメイク版のマーガレット役「ジュリアン・ムーア」も、パイパー・ローリーに勝るとも劣らない演技を見せてくれます。ハリウッドのトップスターはさすがですね。

ちなみにジュリアン・ムーアは、『キャリー(リメイク版)』翌年の2014年に公開された『素顔のままで』で、アカデミー主演女優賞に輝きました。

マーガレットについては甲乙つけられません。パイパー・ローリー、ジュリアン・ムーア、どちらもが悪魔のような迫真の演技で、狂乱ぶりを余すことなく発揮しています。

ホラー映画『キャリー(リメイク版)』違いの総括

『キャリー(リメイク版)』は面白いホラー映画です。

ですが、オリジナル版の焼き回しと言われても致し方ないカットが多いことや、クロエ・グレース・モレッツの普段メイク、CGに頼りすぎ感、結末など、気になる点もいくつかあります。
気になるとはいえ、これらは原作を再現した結果なので、私は「それはそれ」と捉えています。

総括して、オリジナル版と比較してどちらが面白いのかと言えば、 オリジナル版です。
オリジナル版はホラー映画としても映画作品としても、非の打ちどころがありません。
やはり、『キャリー(1967)』はホラー映画の最高傑作、超越は不可能です。

というより、そもそも論になりますが、至高の傑作をリメイクするというのが無理難題なんですね。

実際に名作リメイク版の多くは、原作を超えるどころか辛口評価を浴びせられる、残念な結果を迎えています。
企画は理解できますが、キンバリー・ピアース監督もチャレンジ精神が豊富だなと思います。しかし、自分が監督だったら絶好の機会でもあるので引き受けるかも知れませんね。

リメイク版である以上、どうしても比較して観てしまいがちですが、独立した作品として観るべきです。
その方が、『キャリー(リメイク版)』の魅力が深まり、より楽しく観れるのではないでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました