映画『キャリー(1976)』あらすじ・ネタバレ・考察レビュー

キャリーアイキャッチ 考察・感想・ネタバレ
トラウマ度 ストーリー 血しぶき 恐怖度
★★★ ★★★★ ★★★ ★★★★

『キャリー(1976)』は、怖いホラー映画、面白いホラー映画、傑作ホラー映画の代表的な作品。

悲運な親子の物語。
狂信的な母親の絶対的支配下で育てられてきた少女が、初潮をきっかけに自我が芽生える。そこから引き起こされる、悲しく壮絶な惨劇を描いています。

各方面で高い評価を受けた『キャリー(1976)』は、1977年のアボリアッツ国際ファンタスティック映画祭グランプリを受賞、主演のシシー・スペイセクとパイパー・ローリーがアカデミー賞にノミネートされるなど、輝かしい功績を残しました。
未見の方には是非ともおススメしたいホラー映画です。

この記事では、ホラー映画の名作『キャリー(1976)』のあらすじや考察、ネタバレ、見どころなどを紹介しています。ホラー映画探しの参考になれば幸いです。

ホラー映画『キャリー(1976)』作品情報

出典:Amazon

原題:Carrie
製作国:アメリカ
公開:1976年
収録時間:98分

<スタッフ>
監督:ブライアン・デ・パルマ
脚本:ローレンス・D・コーエン
製作:ポール・モナシュ/ブライアン・デ・パルマ
原作:スティーヴン・キング
音楽:ピノ・ドナッジオ

<キャスト>
キャリー・ホワイト:シシー・スペイセク
マーガレット・ホワイト:パイパー・ローリー
スー・スネル:エイミー・アーヴィング
トミー・ロス:ウィリアム・カット
クリス・ハーゲンセン:ナンシー・アレン
ビリー・ノーラン:ジョン・トラボルタ
コリンズ先生:ベティ・バックリー
ノーマ・ワトソン:P・J・ソールズ


原作は、ホラーの巨匠スティーブン・キングの同名小説。『ミッション:インポッシブル 』や『殺しのドレス 』などを手掛けたブライアン・デ・パルマがメガホンを取り製作されました。最高のホラー映画と名高い、切なく悲しい恐怖の物語です。

ホラー映画『キャリー(1976)』あらすじ

出典:Movieclips Classic Trailers

純粋で優しい性格の女子高校生キャリーは、校内でいじめを受けていた。ある日、クラスメイトからプロムパーティーに誘われ戸惑うキャリーであったが、明るい未来に憧れを抱き、参加を決意する。しかし、プロムでキャリーへのいたずらを計画していたクラスメイトらによって、キャリーは大勢の前で醜態を晒されてしまう。大きなショックと一線を超えた怒りによって我を失ったキャリーは、隠し秘めていたサイコキネシスを爆発させる。湧き上がる怒りと悲しみは地獄の業火となり、辺りの全てを焼き尽くす…。

ホラー映画『キャリー(1976)』ネタバレ・考察・見どころ

覚醒するキャリーホワイト
©1976 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

原作はスティーブン・キングの処女小説

原作は、モダンホラーの帝王スティーブン・キング氏(※以下キング)が1974年に発表した処女小説です。小説「キャリー」は、キングの処女作にして最高傑作と称されるほど、非常に高い評価を受けています。同小説を映像化した『キャリー』は大きな成功を収め、ホラー映画を代表する作品の一つとなりました。

キングは、人が抱える心の闇や負のマインド、そして悲しみから生まれる恐怖を具体化する天才
自覚できないほど奥深くにある心理をネチネチと刺激し、ラストに「どうだ!!」と、皮肉満載のドヤ顔で強烈な攻撃を仕掛けてくるのです。

『キャリー』においても、深い悲しみによって引き起こされる惨劇、その中に渦巻く恐怖を巧みに演出。処女作でありながら完璧なまでの作品を創り上げたキングの才能に、感服します。作品の深みが増して映画がより面白くなるので、原作を読んでおくのもおススメです。
小説はこちら。

キャリー (新潮文庫) 文庫 – 1985/1/29
スティーヴン キング (著), Stephen King (原著), 永井 淳 (翻訳)

シシー・スペイセクの圧倒的な演技力と美貌

キャリー役を演じたシシースペイセク
出典:Carrie 公式Facebookより

『キャリー』は全編通して見応え抜群の作品ですが、一番の見どころは主人公キャリー・ホワイトを演じるシシー・スペイセクの高い演技力と、魅力にあります。

シシー・スペイセクは、1980年公開の『歌え!ロレッタ愛のために』でアカデミー主演女優賞を受賞(同賞のノミネートは計6回)、ゴールデングローブ賞・主演女優賞を複数回受賞するなどした、世界屈指の名女優。本作キャリー・ホワイト役においても、第49回アカデミー主演女優賞にノミネートされています。

オープニングでの衝撃的な表情、悲壮感漂う少女の表現、輝きを放つ女性の演出など、劇中では卓越した演技を見せています。中でも圧巻なのは、最大の見せ場かつキャリーの象徴であるプロムでの惨劇のシーン脳に焼きつく圧倒的で凄まじい演技力です。

プロムで幸せの絶頂にあるキャリーでしたが、仕組まれた悪戯により醜態をさらし会場の笑い者に。
怒りや憎しみなどの感情が極限を超えたキャリーは覚醒し、サイコキネシスを爆発させて全員皆殺しにします。

このシーンのシシー・スペイセクが本当に怖い。(汗)目玉剥き出しにしてゆっくりと顔を下ろし、会場を見渡した時の形相。もう、本物です。沢山のホラー映画を観てきましたが、これほど高い演技力を見せた女優は思い浮かびません。

シシー・スペイセクは演技力だけではなく、とても可愛くて美しい容姿も彼女の大きな魅力です。プロムまではノーメイク調で、素朴で可愛らしい表情を見せています。プロムでは化粧してドレスアップ。その輝かしい姿に、見取れてしまうほどの美貌です。

時に可愛らしく、時に美しい。そして誰よりも怖い。『キャリー』は、そんなシシー・スペイセクの表情や演技がとても印象深く残る映画です。

また、キャリーのリメイク版では、クロエ・グレース・モレッツがキャリー役に抜擢されています。
彼女の演技も素晴らしいのですが、凄まじさという点では、シシー・スペイセクには敵いませんでした。比較して観るのも映画の楽しみ方の一つですが、リメイク版は別物として見る方がいいですね。

オリジナル版とリメイク版の違いや比較は、こちらの記事で詳しく解説しています。

パイパー・ローリーの奇怪な演技

奇怪な演技をするパイパー・ローリー
出典:Carrie 公式Facebookより

キャリーの母親、マーガレット・ホワイトは妄想世界で生きる狂信的なキリスト教信者。演じたパイパー・ローリーが、背筋の凍るような悍ましい演技を披露しています。「あの母ちゃんヤバすぎだろ笑」って誰もが思うことでしょう。

マーガレット役で見せた怪演は高く評価され、第49回アカデミー助演女優賞にノミネートされました。
17歳で映画デビューし、2010年までに数多くの作品に出演を果たしたパイパー・ローリー。アメリカのテレビ映画においても、ゴールデングローブ賞助演女優賞やエミー賞助演女優賞に輝くなど、輝かしい実績を誇る名女優です。

マーガレットは、現実での出来事全てを信仰に結びつけ、事あるごとにキャリーを罵倒します。まともに話しが通じず、手の施しようがない極めて危険な人物です。

パイパー・ローリーは随所で気狂いしたさまを見せますが、特に恐ろしいのは映画終盤のキャリーを殺しにかかるシーン。我が娘に「死ね!魔女め!」と言い放ち、背中に包丁をブッ刺します。そしてほくそ笑みながら、とどめを刺しにキャリーに近寄ります。
この時のパイパー・ローリーの表情や仕草が本当に恐ろしく、胸くそ悪い。リアルに感じる、圧巻の演技力です。

悲しみと恐怖の根源

『キャリー』の肝は、サイキック少女ではなく、この狂人マーガレットにあります。

キャリーはサイコキネシスの持ち主でしたが、いじめを受けていなければプロムでの惨劇は起きていません。キャリーがいじめの標的になってしまった理由の一つは、狂信的なマーガレットの支配下で育てられ、社交性に乏しかったから。
そうでなければ、いじめを受ける人格ではなかったかも知れません。

そして、「初潮とは神聖なる処女ではなくなり汚れた女になることだ」と歪んだ解釈をするマーガレットは、キャリーに生理現象について教えていなかった。もしキャリーが初潮について知っていたならば、シャワー室での出来事は起こり得なかったからです。

マーガレットは、キャリーにおける惨劇の元凶。なので、死ぬ必要がありました。それをキャリーが果たしたところが、悲しく恐ろしい物語を形成しています。

サイコキネシスや復讐劇など、圧倒的な存在感からキャリーが注目されがちですが、『キャリー』の真のテーマはこの悲運な親子関係にあると思います。

ホラー映画『キャリー(1976)』ハイライト考察

学校内で陰険ないじめを受けている主人公キャリー・ホワイト。自宅においても、妄想的かつ狂信的な母親によって罵倒される日々。現実世界を教えられることなく、母親の信仰という檻の中で育てられたがゆえに、キャリーは深い悲しみを背負うことになります。

前半から中盤

シンデレラストーリーさながらのドラマと、その裏で着々と仕込まれていく悪だくみが展開されます。

キャリーをいじめたことで厳しい罰則をうけた悪ガキらが、プロムパーティーでキャリーへの仕返しを計画。そして操られたイケメン・トミーロスがキャリーを強引に誘います。そんなことは知るよしもなく、惨めな人生と自分を変えるため、キャリーはプロムへの参加を決意。

ドレスを繕ったり口紅を塗ってみたりと、普通の女の子になろうと健気に努力するキャリー。そんな姿を見せるキャリーに「罠なのになぁ…。」と思ってしまう。懸命なキャリーへの期待感、その裏で嫌がらせを仕込むみ女らへの嫌悪感が入り混じり、何とも言い難い感情を抱きます。

静かにじっくりと物語りは進み、キャリーにどっぷり共感と感情移入した状態で、クライマックスを迎えます。見事で完璧なプロットです。

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この「共感」は、ホラー映画における恐怖を増幅させる重要な要素。
共感が深くなればなるほど、より多くの感情が刺激され、恐怖を身近なものとして体感できるようになります。
それは、想像であるはずの世界が現実化し、映画の登場人物に自身を投影して疑似体験するからです。

要はリアルになるってことですね。

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迎えるクライマックス

『キャリー』の象徴かつ最大のハイライトである、プロムでの惨劇です。

キャリーは、夜な夜な繕った薄いピンク色のドレスを身にまとい、誰もが振り返る美女へと変貌を遂げます。まさに、美しい羽を広げる蝶になった青虫のよう。この時のキャリーは本当に可愛くて「まるでハリウッド女優!」と思ってしまいました。って大女優です!

不慣れな社交場やダンスを楽しみ、笑顔が溢れるキャリー。そして仕組まれたベストカップルに選ばれ壇上に登ったキャリーは、拍手喝采の祝福を受けることに。キャリーの人生が、初めて光を放った瞬間でした。

幸せの絶頂にあり満面の笑みを浮かべるキャリーでしたが、今世紀最大の屈辱を受けたことでフィールド全開!し、鬼人と化します。そして会場は地獄の業火に…。

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シシー・スペイセクが天使から悪魔へと変貌し、ここから物語は急展開します。
本編を見た人の多くが、一番印象に残ったシーンとして挙げる名場面です。
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終盤からエンディング

全てを焼き尽くしたキャリーは、本能に従うようにして自宅へと戻ります。

音もなく現れた母親に「ママの言う通りだった」と泣きつきくキャリー。キャリーを抱きしめながら、ぶつくさ言っている母親。ブラックアウトしてエンディングに向かうのかと思いきや、そう簡単には終わらせないのがキングです。
大トリを飾る、かつてない親子喧嘩が勃発します。

母親は「死ね!魔女め!」と、キャリーの背中に大きな包丁をぶっ刺すのです。

階段を転げおち、悲痛な表情をうかべるキャリーにとどめを刺そうと近寄る母親。追い詰められたキャリーは、フルパワーのサイコキネシスでナイフを飛ばし、母親を柱にくし刺しにして殺してしまいます。母親は皮肉にも、崇めるキリストと同じ死にざまを迎えることに。(キャリーは魔女だったと表現しているようにも。)

同時に、サイコキネシスの影響を受けた家が崩壊し始めます。キャリーは自分を殺そうとした母親を放置することなく、引きずりながら祈りの小部屋に逃げ込みます。(感情がピークに達するシーン。ここに『キャリー』の全てが詰まっていると私は思います。)
例えようのない悲しみと恐怖に包まれ、涙をこぼしながら祈りを捧げるキャリー。

そして、唯一生き残ったクラスメイトが入院している病室へと場面が切り替わり、エンディングを迎えます。
あの惨劇の悪夢は終わらないことを示唆して。

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ホラー映画『キャリー(1976)』感想まとめ

『キャリー』を鑑賞し終えると、怒りと憎しみを抱く相手に、自分ならどのようにして復讐を果たすか。サイコキネシスが使えたならば、どんな苦痛を与えるか。自分もあの野郎にこうしてああして、天罰を与えたい!

などと、まるで自分が映画の主人公になったかのように、良からぬ妄想をしてしまうことも。『キャリー』は、それほど心に刺さる映画です。

キャリーが憎んだのは、自分を罵り辱め嘲笑った人間たち。
もし私がキャリーだったら、同じように復讐を果たすでしょう。

人は誰しもがこう思います。
深い悲しみや絶望は背負いたくない。
心が傷付きながら生きたくはない。

しかし現実は、それに似た負の感情を背負いながら生きている。その絶望感や喪失感の果てにある恐怖を『キャリー』は再現しているのです。

人が抱える奥深くの心模様。
『キャリー』における恐怖の本質ではないでしょうか。

ホラー映画『キャリー(1976)』SNSでの口コミ

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